今日、今月末で退職される大石先生が、代田分室を訪ねてくださいました。先生は10年以上ひのきでご指導くださいましたが、今年度は進学18Aクラスの担任を務められました。
先生から、学生の小論文を集めた記念の冊子『進学18Aみんなの小論文』をいただきました。テーマは、社会、医療、環境、歴史、経済、人口、交通、食生活、哲学、スポーツ、移民など、多岐にわたります。
19名の小論文の中から、冊子の掉尾を飾るに相応しい文章をご紹介します。桜の便りの届き始めた今の時期に、しみじみ味わってみたい文章です。問題 好きな日本語の言葉を一つ挙げ、その理由を自由に述べなさい。(慶應義塾大学文学部)<私の好きな日本語の言葉は、「儚い」という言葉です。
この言葉は、「消えてなくなりやすい」という意味です。よく「儚い人生」と人々は言います。「儚」の漢字は「人」と「夢」で構成され、「人生は夢の如し」という空しい意味が感じられる字だと思います。
中国には、「胡蝶の夢」という話があります。「昔、荘子は夢で胡蝶となり、自由に楽しく飛び回っていたが、目覚めると紛れもなく荘子だった。しかし、荘子が夢で胡蝶となったのだろうか、胡蝶が夢で荘子となったのだろうか」といった内容の説話です。夢と現実の区別が絶対的なものではないと暗示されています。人の人生は儚いという説は、「人生は短い夢にすぎない」にある意味合っていますので、耽美的に消えるものに対する感情を表します。
さらに、「諸行無常」という仏教的な説に繋げられます。「この世の現実的存在はすべて永遠にならない、一瞬の間にも物事が変化する」という意味になります。日本の伝統的な美意識としての「無常」はここから受け入れたのです。日本人が桜を愛してやまないのは、その常なき様です。「儚い桜のあり様」「儚い人生」などはすなわち「無常」の感じ方とされます。このような審美観を受け入れると、「儚い」の美しさが感じられます。人生は、この世のすべては、消えるものであれ、夢であれ、儚く、それこそ美しい…。
以上の理由で、私は「儚い」という言葉が好きです。>(サイ ウキン)