留学生のことを描いた絵本です。あらすじはこんな感じ。ある日、主人公の<僕>の家に留学生がやってきます。その留学生はとても発音できないような名前で、「エリックでいいです」と言いました。エリックはとても小さくて、カップの中に入ってしまうほど。用意したベットではなく食器棚で寝泊まりしていました。
エリックは<僕>から見ると、とても奇妙だと思われる行動を度々とります。するとそのたびに母さんが「お国柄でしょう」と言います。<僕>はエリックに、この街のいい所を見せようと連れだすのですが、エリックはちっとも興味を示しません。エリックの興味はとてもちっぽけなものに向けられるんです。<僕>は不満だったけど、お母さんから「お国柄でしょう」と言われ、だんだん慣れていきました。
そしてある日、エリックは出て行きました。それっきり帰って来ません。あ母さんは「お国柄でしょう」と言いましたが、<僕>は寂しい気持ちになりました。
そのうち、食器棚のカップや小皿に色とりどりの小さな花が咲きました。その花はエリックが撒いた種から出たものでした。そして、その花は決して枯れませんでした。寝床だったカップにはカラフルな文字で『ありがとう』と書いてありました。
異文化体験とそこから生まれた消えない花。私たち日本語教師も、そんな花を育てることに役立ちたいものです。(大内)
*ショーン・タン著『エリック』、河出書房新社、2012年。